Oの物語。

2016年4月 3日 (日)

泣き声。

 今からもう数十年も前、水色の青空の下で、男の子が泣いている。

 水は透明だが、何か少しにおいのある感じの水が流れる、幅5,6メートルほどの西除川に、黄色い横シマの半そでにカーキ色の半ズボンをはいた男の子が、脛の半分まで水につかりながら泣いている。

 ええん、ええん。ええん、ええん。

 ええん、ええんが、びええん、びええんになる。

 びええん、びええん。びええん、びええん。

 川の中には、男の子と一緒に川遊びをしていた子供が数人、困ったように男の子を見ている。男の子は小学生になるかならないか、周りの子供も同じような年代で、年長らしき体の大きい男の子がなだめようとするが、いっこうに泣き止まない。

 びええん、びええん。びええん、びええん。

 びええん、びええんが、ぶええん、ぶええんになる。

 ぶええん、ぶええん。ぶええん、ぶええん。

 コンクリートで固められた2,3メートル上の川岸には4,5人の男の子たちがいて、あんまり男の子が泣くもんだから、困った顔で動きもせずその様子を眺めている。

 その子たちと川の中の子供たちは、何かの拍子に言い争いになって、上から小石を投げていたのだが、たまたまその男の子の顔に小石が当たってしまったのである。最初は構わず小石を投げていたのだが、男の子が泣きだして川からは誰も声をあげなくなったので、川岸の子供たちも小石を投げるのをやめて、その泣き声をただ聞いていたのである。

 ぶええん、ぶええん。ぶええん、ぶええん。

 ぶええん、ぶええん。ぶええん、ぶええん。

 どれほどの時間が経っただろうか。200メートルは離れている家にいたその子の父親が男の子の泣くのを聞きつけてやってきた。何やら川岸の子供たちと話をした後で、ほどなく男の子は父親に連れられて家に帰ってきた。

 その日の夕方、男の子の眉間には絆創膏が額から鼻筋にまっすぐ張られているのであった。

 

| | コメント (0)