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2012年6月 6日 (水)

image of world 0(1)the snow 2

 雪はさらに重くなって、ゆらゆらと降り下りる。メガロポリスには所々大きな縦坑が開いている。大昔人々がこの地から鉱物を採取した名残である。ただ今は、さまざまな配管の出口があって、そこから空気や何かのやり取りをしているだけだ。

 もし地上から雪の降る様子を見たら、白くチラチラと舞う雪が足元の大きな穴の暗黒の中に融けてしまうように見えるかもしれない。逆にそれを下から見上げたら、明々と光る丸い窓から、何か黒い物体がひらひらと舞い落ちてくるように見えるかもしれない。

 ひらひらと黒く舞い落ちる雪。その舞い落ちる雪を地球の底の底から眺める者がいる。この冬の寒さの中、何とも言いがたい表情、驚き、苦悩、悲しみ、諦め、納得、確信、信頼。なんと言っていいのか分からないが、彼女はそんな表情をして立っている。少女と言う年齢ではないが、女性と言うにはまだ幼い。その彼女は決して豪華ではないが身ぎれいに白いブラウスと紺色の長いスカートをはいて、大都市の底に住んでいた。決して裕福ではないが、独りそれなりに暮らしを立てていた。現実を見つめ、それでもなお夢も希望も捨てないやはり普通の女性だった。

 しかし、彼女は今、美術館の彫刻のように動かない。いや動けない。彼女はダイヤモンドのように透明な氷の塊にすでに閉ざされている。いつから彼女はそうなったのだろう。誰も知らないが、時折彼女の目はきらりと光る。さすがにその時ばかりは悲しみの表情で何かを訴えかける。ただ、悲しいかな、今となってはその悲しみさえ知る者はいない。ただただ、その氷の上に雪が降るばかりである。

 しかし不思議なことに雪が降り落ちても積もることはない。彼女の何らかの意思がまだここにあるように、ダイヤモンドのような氷の上に降る雪は瞬く間に消えてしまうのだ。

 

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2012年6月 5日 (火)

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 厚い雲に覆われた真っ黒な空から灰色の雪が降る。ちらりちらりとレーザービームで照らされて、降りしきる花びらのようにユラユラと降っていく。もちろん雪は白い。ただそれを照らす明かりが下からぼんやりと届くだけなので、本来の白さではなく灰色に見えてしまう。時折、銀河鉄道のために軌道を示すレーザービームがシュッシュッと光るとその光を反射して雪はちらりちらりと白く輝く。もう何十年も続けてそうであるかのように。

 ここは繁栄を極めるメガロポリス。空を突く摩天楼がところ狭しとひしめき合っている。幾多の窓から明かりが漏れている。幾分重くなった雪は窓辺の明かりに照らされて白く静かに降り下りていくが、この都市にはそんな物に興味を持つ者はもういないようだ。

 ある窓の奥には平凡な家族がいる。薄暗い明かりの下に、かなり太ってしまった若い男女がいる。それなりに痩せていれば、それなりの容姿でいるはずだが、彼らはそんなことにはお構いなしで、それぞれの欲求を満たすためにソファに座っている。身を包み込むように埋まっていると言ってもいい。顔の前には透明なディスプレイがある。男はそれで性欲を満たそうとし、女はそれで恋愛を楽しもうとする。音は外には聞こえないようだし、そもそも男も女も相手のことはまったく気にしていないようだ。そして絶えず手元から食べ物を運び口をモグモグ動かしている。隣の部屋には5,6歳の女の子が一人カプセルの中で寝息を立てている。

 ある窓では、細身の女性、24,5歳だろうか、窓に向かいソファに腰掛け、ただ降り続く雪を見つめている。いや彼女は雪を見ているのではない。自分の心の中の眺めているのだ。雪の動きはその思考にリズムを与えるだけのものでしかない。金色の長い髪を細い華奢な指でもてあそびながら、今までの彼女が通り過ぎてきた事、これから彼女がやらなければいけない事を何となく外の雪を見ながら考えているともなしに考えている。

 深々と降り下りる雪。だが突然雪は消えてしまう。人が作り上げた最大の都市、このメガロポリスでは、地上にあるものに名前を付けないでは置かれない。人ならば常にコンピュータがその動きを追いかけている。自動車でも、猫でも、ネズミでもその動きは監視される。ただ、普通に動いている分には処分されることは無い。自由に動く権利は何にでも保障されている。あの部分に近づかないなら。。。

 メガロポリスは快適に人々が暮らせるように作られている。室内は常に人々のためにコンピュータによって制御されている。屋外でもそうである。雪、雨でも同じだが地面に触れた瞬間音も無く消えてしまう。人々が安全に暮らせるような都市、それがメガロポリスなのだ。

 しかし、降りしきる雪の中にはそのまま消えないでさらに下まで降り積もるものも多い。

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