あゆみ

2007年5月22日 (火)

あゆみ(2)

Dscn0777 タクシーは国道に突き当たり、すっと左に曲がる。国道といっても車はまばら、前に小さく白い車が走っている。対向車もやってこない。

運転手は、「どちらからいらっしゃって?」、「あー、大阪ですか?」、「私も昔大阪で働いていたことがあります。」など、ミラー越しに話しかけてくる。

僕は、右手のサトウキビ畑とその向こうに細く広がる海をじっと見ていた。

10分ほども走ったろう。「東洋一美しい」という砂浜に着いた。ジリジリ肌を焼く太陽の光は、目の前に広がる海と砂浜にも降り注ぎ、いっそうその色を僕の目に焼き付ける。僕はよろよろとその砂を踏み、波打ち際に立つ。透明な水、白く細やかな砂。僕の心にも、ざわざわと波が打ち寄せてきた。

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2007年5月 9日 (水)

あゆみ(1)

Dscn1147 心の中では、ずっと居心地の悪さを感じている。一人目覚めても。親と顔をあわせてなんとはない話をしても。弟と飲みに出て二人酔っ払っても。古くからの友人の所に遊びに行って懐かしい話やらしても。僕は、若い。二十歳を超えて、やっと世の中が見え始めるころ。いやあ、全く分かっていなかったのかもしれない。自分ひとり置いて、みんなが先へと進んでいる。一番近くにいると思う彼女でさえ、僕を置いて進んでいく。そんな時期だったんだ。

僕は、早々にドロップアウトした。今でもそうだが、僕は忍耐力に欠ける。あるいは、気が多いのかもしれない。日常が、嫌になったわけじゃない。でも、そのままでいることが嫌になったんだ。そのまま自分でがんばるよりも、環境を変えて、いつかまた、自分の足で歩き出すために、自分の道を自分で踏みしめるために、ドロップアウトした。

ちょうど学生たちが春休みになって、込み合う空港に、いつものバッグに着るものだけ詰めて向かった。アルバイトをした時にもらった、青のバッグ。長年の旅の相棒だ。行き先は、南。

本当は、どこでも良かった。南である必要はなかった。どこでも良かったんだ。この選択は、かなり大きな影響を僕の人生に与えるのだが、ちょっとしたことで人生とは変わっていくものだ。

なんというこだわりもなく決めた、沖縄行。到着地は、宮古島。飛行機に乗り込めば早いもので、2時間あまりで着く。別に行き先に興味があるわけでなく、機中では、ずっと眠っていた。到着のアナウンスに起こされて、宮古島空港に降り立ったが、日差しも強く、もわっとする空気が、そのまま僕を夢見心地にする。タクシーに乗り、「一番いいところに連れてってくれ。」と言えば、車はすぐに走り出す。空港沿いの細くまっすぐな道を車は抜けて、しばらく走ると、正面に海が見える。青い空、ゆっくりすべる白い雲が、綺麗に映っている。僕は、目を見開いた。全く未知の世界の入り口が、心の底で待ち望んでいた出口がそこにあるように感じたんだ。僕はタクシーの後ろから、前のシートの間に首を突き出し、じっと青い海を見ていた。

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